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  • くにい

『聖家族』 堀辰雄


 九鬼(くき)が亡くなる。九鬼に憧れていた河野扁理(こうのへんり)はその死によって心が乱されていく。

 扁理は九鬼の死のあと、細木(さいき)という未亡人と再会し、細木の娘の絹子と出会う。

  ―――――― まるで九鬼を裏返しにしたような青年だ。

 細木と細木の目を通して扁理を見ていた絹子は、扁理をそのように解釈する。

 亡くなった九鬼と細木は確かに愛し合っていた。しかし、細木の硬い心は弱い九鬼を傷つけずに愛することは出来なかった。

 扁理は自分も傷つかぬよう、細木と絹子から離れることを決意した。扁理は小さくて、そんなに美しくなかった踊り子を気に入った。しかし、その踊り子に心を奪われかけたときに、ふと絹子のことを思い出す。



一方、絹子にも変化が見られる。しかし、その感情を愛だと自覚するには、絹子はまだ幼すぎた。自らの中に芽生えた感情をにせものの理由で片付けてしまう。

 絹子は扁理と一緒にいた女性が踊り子であると人づてに知り、笑みを浮かべる。



 扁理が細木の家に挨拶をした後、旅に発つ。トランクも持たず、知らない場所に降り立つ。通行人の顔、何かのビラ、壁の上の落書き、紙屑、小さなホテルの一室。すべてが不吉に見えるのは、それらは死の暗号だからだということに気付く。九鬼が以前ここに来て、自分と同じような感覚を持ったような気がしてならなかった。



扁理が旅に出た後、絹子は病気になる。とうとう絹子は扁理への愛を自白する。


 これより後のシーンはご自身の目と感性でお確かめください。絹子と母である細木とのやり取りは、後悔や嫉妬が愛情にコーティングされていて、見事の一言に尽きます。

 ぜひ、お楽しみください!




この話の理解を助けてくれる象徴的なシーンがあります。


 「裏返し」これを意識しながら読むと、この作品をやり楽しむことができます。例えば、絹子が扁理の自殺を心配したシーンを見てみましょう。細木夫人が言ったこの言葉の理解が出来るのではないでしょうか。


九鬼は死んだけれども、扁理はその裏返しなのだから大丈夫だと考えるんです。細木夫人は九鬼のことをよく理解していたのですね。


 2つ目のポイントは「自らも気付かない心の揺れ」 

自分の感情なのに、自分は気付くことが出来ていない。思い返してみるとそんな感情は私にもあったような気がします。このポイントを意識してぜひ楽しんでみてください。

 最後までお付き合いありがとうございました。



 

小説は自分の感性で自由に楽しむものです。私が感じたことを言葉にすることで誰かが楽しめれば良いなと思い始めました。言葉が映し出す脳内のシネマを是非楽しんで下さい。励みになりますので右下のイイネのクリックをお願いします!




『聖家族』 読了時間 約41分








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